インスタ映えへのアンチーテーゼ「リアル」を追求するSNS「BeReal」とは?

インスタ映えへのアンチーテーゼ「リアル」を追求するSNS「BeReal」とは?

2022年9月23日

SNS「BeReal」とは何か──リアルを共有する新しいSNSのかたち

2020年代も後半に入り、SNSの使われ方は多様化している。

InstagramやTikTokといった「映える」投稿文化に対し、そのアンチテーゼとも言えるSNSとして注目を集めているのがBeReal(ビーリアル)だ。このアプリは、「リアルな自分をそのまま見せる」というコンセプトを掲げ、加工や演出のない素の瞬間を友人と共有する仕組みになっている。

■ BeRealの基本的な仕組み

BeRealの最大の特徴は、1日に1回、アプリから送られてくる通知のタイミングでのみ投稿できるというルールである。通知の時間は完全にランダムで、ユーザーはその通知を受け取ったら、2分以内にスマホの前面カメラと背面カメラを同時に使用して写真を撮影・投稿することが求められる。

この仕様によって、「撮影のために整える」余裕はほとんどない。ユーザーは自分がその瞬間にいた場所、顔の表情、周囲の風景などをありのままに記録し、友人たちと共有することになる。この仕組みにより、BeRealは「ありのままの自分」「つくり込まない日常」を共有する、新しいSNS体験を提供している。

■ 投稿と閲覧のルール

BeRealでは、自分が投稿を済ませない限り、他人の投稿を見ることができない。つまり、閲覧のためにはまず自分もリアルをさらけ出す必要がある。この対等性が、観察者になりがちなSNSの「見る専」文化とは異なる関係性を生み出している。

また、2分以内という制限があるとはいえ、期限を過ぎた投稿も可能である。ただし、その場合には「○時間遅れ」と明記されるため、リアルタイム性に欠けていることが他者にも分かってしまう。この点も、BeRealが「今この瞬間」を大切にしている証だろう。

■ 加工・演出の排除

BeRealでは、写真にフィルターやエフェクトを加える機能は一切存在しない。この徹底ぶりもまた、リアルさを担保するための設計である。多くのSNSが「より美しく、より魅力的に」見せるための機能を競って追加する中で、BeRealは逆方向に舵を切っている。

「映え」を追求せず、「素の瞬間」をそのまま残すというスタンスは、多くの若者にとって新鮮であり、かつ解放感のある体験を提供している。

■ リアクション機能「リアルモジ」

BeRealには、「リアルモジ(RealMoji)」という独自のリアクション機能がある。これは、投稿された写真に対して、自分の顔写真をリアルタイムで撮影してリアクションするというもの。通常の絵文字よりもはるかに個人的な表現が可能で、友人との親密さを高める要素になっている。

■ BeRealが支持される背景

BeRealが急速に広まった背景には、近年のSNS疲れ自己演出に対する反動がある。InstagramやTikTokでは、完璧に整ったライフスタイルや外見がもてはやされ、それが多くの人にとって「比較によるストレス」や「承認欲求の疲弊」を招いている。

その点、BeRealはまったく逆の価値観を提示する。見栄を張ることなく、日常の中でたまたまキャッチされた瞬間を共有する。たとえば、「昼寝していたところ」「仕事中のパソコン画面」「ラーメンを食べている姿」など、他人から見れば地味であっても、自分にとっては大切な瞬間が記録される。

こうした「普通の瞬間」こそがリアルだという考え方に、多くのユーザーが共感しているという。

■ 他SNSとの違い(比較)

特徴 Instagram TikTok BeReal
投稿の自由度 高い 高い 低い(1日1回)
加工・編集機能 豊富 非常に豊富 なし
投稿メディア 写真・動画 短尺動画 同時撮影の写真
視聴のみの利用 可能 可能 不可(投稿必須)
コンセプト 美しく、魅せる 楽しませる・表現 本当の自分を見せる

この比較からも分かる通り、BeRealは「ありのまま」という点で既存のSNSとは一線を画している。

■ 利用者層と文化

BeRealは特に10代後半〜20代前半の若者を中心に人気を博している。Z世代のユーザーたちは、SNSを「表現の場」としてだけでなく、「自分の存在確認」や「共感」のためのツールとして使っており、BeRealのシンプルで押し付けのない文化がマッチしたのだろう。

また、親しい友人とのつながりを重視する設計も特徴的である。投稿は原則として「友人限定公開」で、知らない人とのフォロー・フォロワー文化は希薄である。これにより、フォロワー数やいいね数を競う文化が排除され、より自然体な関係性が築かれる。

■ BeRealの課題と将来性

BeRealの急成長の一方で、課題もある。1日1回しか投稿できない制限は、「面白みに欠ける」と感じるユーザーもいる。また、同じような写真が続くと、「飽き」が来ることも否めない。さらに、収益化の手段が確立されておらず、運営の持続可能性についても課題が残る。

しかし、こうした批判はあるにせよ、BeRealがSNS文化に新たな価値観を提示したことは間違いない。演出や加工から解放されたいというニーズは根強く、BeReal的な「リアル重視」のトレンドは今後も一定の影響力を持ち続けるだろう。


まとめ

BeRealは、InstagramやTikTokが築いたSNS文化とはまったく異なる方向性を持つ、新しいタイプのソーシャルネットワークである。日常の中の一瞬を、飾らず、加工せずに友人と共有するというコンセプトは、SNSに疲れた現代人の心にフィットするものがある。

「映え」や「演出」がSNSの主流である時代に、「素の自分を見せる」ことが価値になるという逆転の発想。それこそが、BeRealが注目される理由であり、多くのユーザーを惹きつけている魅力なのだ。